食事療法は糖尿病の治療の基本です。
お薬を使用していても食事療法が行われていなければ、血糖値は十分に下がりません。
しかしおいしいものをたくさん食べたいと思うのは、人間のごく自然な欲求であり、ここに食事療法のむずかしさがあります。
厳しすぎる食事指導は、患者さんを精神的に追いつめてしまうことが少なくありません。
また細かすぎるカロリーの計算が食事療法を長く続けてゆく上で障害となる場合もあります。
食事療法で最も大切なのは、毎日続けることです。
まずはご自分ができること・続けやすいことから少しずつはじめてみましょう。
面倒なカロリー計算などをことさら行わなくても、1食の内容を、ご飯は茶碗1杯、肉・魚の料理は揚げ物以外とし量はお皿の3分の1くらいまでとする、そして野菜などの小鉢を2品とすれば、これで立派に食事療法を行っていることになります。
病人食というイメージではなく、ご自分の体にあった健康食と捉えていただければと思います。
糖尿病の治療では、食生活など生活習慣の改善のみで血糖値が十分に下がらない場合、お薬(飲み薬)が開始となります。
1990年頃までは、糖尿病の飲み薬はわずかに2系統ほどしかありまんでした。
現在では、6系統のお薬を使用することが出来るようになっています。
糖尿病のお薬を始める際に、最初にまずどのお薬から使うのかはっきりとした決まりはありません。
このため、実際の診療では最初から作用の強いお薬を使ってしまうこともあるようです。
しかし、これは必ずしも正しい使い方ではありません。
作用の緩やかな、できるだけ低血糖をおこしにくいお薬から使用するのが治療の原則です。
そして、膵臓を刺激しない、膵臓にやさしいお薬を選んだ方が、長期的には患者さんに有利です。
また、作用の強いお薬を使う際には、少ない量から始めないと低血糖を起こしてしまう危険があるので注意が必要です。
患者さんひとりひとりに最適な治療が行われるよう上手にお薬を選ぶのが医師の役割です。
糖尿病のお薬は、作用の緩やかな、低血糖を起こしにくいお薬から使用するのが原則です。
また膵臓にやさしいお薬を選んだ方が、長期的には患者さんに有利です。
最近注目されている糖尿病のお薬に、アクトス(一般名 ビオグリダゾン)があります。
低血糖を起こす危険がほとんどなく、膵臓にやさしく作用します。また1日の服用回数は1回のみとなっており便利です。
特筆すべきなのが、動脈硬化に対する作用です。心筋梗塞や脳梗塞の予防効果があることが最近の研究で証明されました。
血糖値を下げるだけではなく、動脈硬化を抑える働きがあるアテイポネクチンを増加させる効果があることなどがわかっています。
副作用には浮腫(むくみ)があります。
女性や糖尿病の期間が長い患者さんに使用すると浮腫が出やすいので、注意が必要です。
患者さんひとりひとりに最適な治療が行われるよう上手にお薬を選ぶのが医師の役割です。
最近の研究により、糖尿病の患者さんの血圧コントロールが眼の合併症(糖尿病性網膜症)や脳卒中・心筋梗塞の起こり方に大きく影響していることがわかってきました。
このため糖尿病の方の血圧は、180/80mmHg未満を目標にしっかり下げる必要があります。
またどの種類のお薬を使用するかにも配慮が必要です。
糖尿病の患者さんに血圧のお薬を服用していただく場合、ACE阻害薬(タナトリルなど)やARB(ミカルデイスなど)といったお薬が第一選択となります。
これは、これらのお薬が血圧を下げる以外に糖尿病の患者さんの心臓や血管、腎臓を保護するプラスアルファの効果を持っていると考えられているからです。
糖尿病の患者さんの高血圧治療では、1種類のお薬のみでは血圧が目標値まで十分に下がらないことが少なくなく、この場合には積極的に複数のお薬を併用することが重要となります。
患者さんひとりひとりに最適な治療が行われるよう上手にお薬を選ぶのが医師の役割です。
心筋梗塞は大変こわい病気です。
病院に到着する前に亡くなってしまう方も少なくありません。
糖尿病があると動脈硬化が進行しやすく、糖尿病でない方と比べると3倍以上心筋梗塞が起こりやすくなります。
このため糖尿病の治療を行う際に心筋梗塞の予防をどのように行うかが、現在大きな問題となっています。
血糖値の管理はもちろん大切です。
しかし単に血糖値を下げるだけの治療では心筋梗塞の予防はできないことがわかっています。
糖尿病の方の心筋梗塞を予防するためには、コレステロールと血圧の細かい管理が、血糖値を下げること以上にとても大切です。
血糖値・コレステロール・血圧の3つを同時にしっかり治療することが糖尿病の方の心筋梗塞の予防には欠かせません。
また糖尿病があると胸の痛みなどの心臓の症状を感じにくくなります。
そのため胸の痛みなどの症状が特になくても、心電図や心エコーなどの心臓チェックが定期的に必要です。
糖尿病は循環器の病気でもあります。
血糖値が気になる方は、胸の痛みや心電図の変化などにもご注意下さい。
糖尿病で使用するお薬には、飲み薬と注射で使用するインスリンがあります。
生活習慣の改善や飲み薬だけでは血糖値が十分に下がらない場合、インスリンの注射が必要となります。インスリンの注射には抵抗感をお持ちの方が少なくないと思います。しかし、極細の針を使用するため、インスリンの注射の際に痛みを感じることはまずありません。また、最近の注射機材は格段に進歩しており、大変使いやすくなっています。携帯電話を使用されている方であれば、すぐに操作を覚えることができます。
近年、持効型インスリンという新しいインスリンが開発され、1日に1回のみの注射で空腹時の血糖値をコントロールすることが可能となりました。持効型インスリンには、夜間の低血糖が起こりにくいなどのメリットもあります。インスリンを始める際、以前はそれまでの内服薬を全て中止していました。しかし、持効型インスリンの登場により、飲み薬は続けたままで、1日に1回持効型インスリンの注射を行う方法が注目されるようになっています(患者さんにより適応とならない場合もあります)。
1日に数回インスリンの注射を行う方法と比べ、簡便である点が大きなメリットで、外来で導入を行うことも可能です。インスリンの導入が遅くなると、結局は将来の不利益へつながってゆきます。グリメピリドやグリベンクラミドをしばらく服用されているにもかかわらず、ヘモグロビンAlcが7.5%以下にならない方は、持効型インスリンの使用について検討されることをお勧めします。早い段階で始めたほうが、将来インスリンを中止できる可能性がそれだけ高くなりますし、またより少ないインスリン量で血糖値が低下する可能性も高くなります。